緑肥とは!? メリットやデメリット、種類も解説!
有機農法の一つである緑肥農法とは何か知っていますか?
そんな言葉初めて聞いた・・・
そもそも緑肥って何?
緑肥にはどんな種類があるの?
緑肥農法にはどんなメリットデメリットがあるの?
そんな方も多いのではないでしょうか。
日本では歴史があり、今後ますます注目されるであろう緑肥農法ですが、実際はまだまだ知られていないのが現状です・・・
今回はそんな疑問を解決し、さらに緑肥農法を知ってもらえるよう米農家が詳しく解説します!
緑肥とは?
緑肥とは栽培している植物を収穫せずそのまま田畑にすき込み(※1)、あとから栽培する作物の肥料として利用することです。
食物を作るには、地中に肥料成分がなければ作物は育ちません。
現在、日本の現代農法は、化成肥料を使った農業技術が一般的ですが、
昨今の『持続可能な社会(SDGs)』への関心の高まりや、世界情勢の不安定化により化学肥料の価格が高騰したこともあって、
日本でも有機農法が見直されつつあります。
緑肥を使った有機農法は、自然環境にやさしい農法であり、日本では緑肥農法の前身である『草刈敷(くさかりしき)(※2)』を行ってきた歴史があります。
日本は、気温、降水量とも恵まれた気象条件があり、緑肥栽培に適した国土を有しています。
今後ますます注目される可能性があります。(写真:レンゲ草)
(※1)すき込みとは、トラクターなどを使って圃場上にある有機物を地中に入れ込み、かきまぜること。
(※2)『草刈敷(くさかりしき)』とは、耕地以外の土壌の養分を草を介して耕地に投入すること。
緑肥の特徴(メリット)
①窒素固定による養分の補給
マメ科の植物は根粒菌との共生により空中窒素を固定するため、後作物に窒素を供給する効果が高くなります。
②団粒構造の形成
土壌中に適度な隙間を作り、有機物を供給することで土壌の団粒化を促します。団粒構造は健全な根の育成に大きく貢献します。
③排水性の改善
深根性であるマメ科の作物は、根が土壌に深く侵入するため、排水性が改善できます。
④有害線虫の抑制
特定の緑肥を作付けすることで、キタネグレサ線虫、サツマイモネコブ線虫を抑制することができます。
⑤雑草の抑制
植物の被覆により太陽光が遮光されること、そして、根から分泌される成分により雑草を抑制する効果(アレロパシー)があります。
⑥景観美化
土壌の流亡を防いだり、土埃の舞い上がりを防ぎます。レンゲやヒマワリの花が咲くと景観美化にもつながります。
⑦土壌中の過剰な養分の回収
ソルゴーなどを育てると、地中に過剰にある窒素を吸収し、地中内養分のバランスを整えます。
緑肥の特徴(デメリット)
①生育量が天候や圃場環境に左右される
緑肥自身も植物なので、生育過程において天候や圃場の影響をうけます。
例えば、マメ科の緑肥であるヘアリーベッチは、発芽以降の生育過程において、乾燥した土壌条件を好み、湿った圃場では生育が良くありません。
種はしっかり撒いても、生育量が悪いと、根粒菌の量も増えず、想定した量の施肥ができないことがあります。
②一作物分を育てる時間や生産コストがかかる
緑肥は播種、発芽、生長、成熟という過程を経て、初めて肥料としての役割を果たします。
つまり、肥料として使うためにおおよそ半年ほどの時間を要するのが一般的です。
緑肥を使った栽培は、化成肥料に比べて時間がかかってしまうため、生産コストも少し割高となります。
③化成肥料に比べて収量が少ない
緑肥は生育過程での良し悪しで、肥料量のバラつきが出てしまうため、
化学的に計算された肥料量を施肥できる化成肥料に比べると安定した収量が難しく、
一般的に生産量も低い傾向になってしまいます。
♦緑肥の種類
緑肥の種類は大きく分けて、キク科、イネ科、マメ科、アブラナ科の4つに分けることができます。
科が違えば、種を撒く時期も違うし、また、土壌中で繁殖する菌類も、違います。
そして一番注意しなければイケないことは、作付けする作物にあった緑肥を選ぶことがもっとも大切です。
本稿では一般的によく使われる緑肥である『イネ科』と『マメ科』について紹介したいと思います。
※写真は『ひまわり(キク科)』 菌根菌が活性化してリン酸の吸収効率が良い。
緑肥の種類① イネ科
【ソルゴー(イネ科)】
他の緑肥と比べて多くの有機物を生産したり、土の中に残っている栄養を吸収したりするという特長があります。
根こぶ病やネグサレセンチュウを抑制する効果があります。
また根っこの量が多く、土を柔らかくし団粒構造を促進します。
幹が太く倒れにくく、葉茎は柔らかいためすき込み作業がしやすい上、土壌での分解が早いという特徴があります。
高温を好む作物のため春や夏の使用に適しています。
【エンバク (イネ科)】
根っこの量は多く、地中深くまで根を伸ばします。
作物の根が地中深くまで伸びることで透水性が向上するため、
栽培する作物が水分や栄養分を広範囲で吸収することができるようになります。
根っこから分泌されるアベナシンは根こぶ病を抑制すると言われています。
緑肥の種類② マメ科
【クリムソンクローバー(マメ科)】
マメ科の植物の根に寄生し被害をもたらすダイズシストセンチュウを抑制します。
草丈は0.5~1mほどに生長し、春に鮮やかな赤い花を咲かせるため景観を楽しむこともできます。
【エビスグサ(マメ科)】
キタネグサレセンチュウ・ナミイシュクセンチュウの抑制の効果が期待できます。
葉っぱや茎はやわらかくすき込み作業を行いやすいという特長があります。
多湿環境を好み気温が高い地域で生長します。
♦【たんぼや市河十三代】で使用している緑肥は?
【ヘアリーベッチ (マメ科)】
つる性植物のため、つるを絡ませて絨毯のように広がります。
根は40cmほど地中深くまで伸長し、排水性や保水性といった土壌環境を改善する効果が期待できます。
また、菌根菌が根に定着するため、リン酸を補給し、作物の実りを豊かにします。
そして、ヘアリーベッチが分泌するシアナミドは雑草の生長を抑制するので、リビングマルチとしても使われます。
4月下旬には、田んぼ一面にうっそうとした緑の大地が広がり、生命感があふれ、とてもキレイです。
【レンゲ草 (マメ科)】
開花頃の茎や葉は窒素の含有量が最も多く、完全に枯れる前にすき込むと良い効果が期待できます。
当家では稲刈り後(11月上旬)、すぐに圃場に種を撒き、5月のゴールデンウィークに、田んぼに鋤き込みます。
鋤き込み前はたんぼ一面にレンゲ草が広がり、景観もよく、爽やかな景色を作ります。
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緑肥で土づくりをした当家の田んぼは、根っこが太くしっかりとした稲が育ちます。
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豊潤な味わいを持つお米が出来上がります。
ぜひ、一度お試しください。
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